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映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

私的2020年映画ランキング:ベスト30

コロナ元年がぼちぼち終わろうとしてますけれどもね、つまりはベスト作品を選び散らかしていく時期がやってきたということであれこれ選んでおりましたところ、気づいたら30作品ほど並んでおりまして。

 

2020年は186本鑑賞、うち今年公開作品は76本鑑賞。昨年と鑑賞本数はたいして変わらず今年は公開延期作品も多かったくせに豊作だったんですよ。ベスト10に絞れなかったことどうか許してほしい。

 

しかしまぁ、未曾有のコロナ禍によって映画館の一時的な営業停止やミニシアターの閉鎖、作品の公開延期など様々なことがあった2020年の映画業界。普段にも増して新作の公開に一喜一憂したように思います。

 

それでも下半期以降に公開を予定していた大作は軒並み来年以降への公開延期となりました。

劇場での公開と並行してAmazonプライムNetflixなどでの配信を行う作品もあったものの、ウイルス感染者数の伸びると楽しみな作品が公開を後ろ倒すのではないかと肝を冷やす…そんな1年でした。

 

とはいえ予算をかけている大作ほどそれ以上の興行収入を求められることは当然なわけで、公開延期という制作・配給側の苦渋の決断を非難できるわけもなく。こればかりは来年以降の楽しみだと言い聞かせましょう。

 

一方で2020年は例年からすると珍しく、今年度のアカデミー賞ノミネート作品のほとんどが授賞式のタイミングで日本で公開していたという珍しい年でもありました。

 

ノミネート作品は個人的に刺さる作品も多く、2月時点で既に豊作な年になりそうだと感じていたこともあったんですよね。

 

他にも小規模上映から始まった作品がロングランとなったり、ジブリMCUなどの過去作品がリバイバル上映されたり、興行収入の記録が塗り替えられたりと面白い年でもあったように思います。円盤持ってくるくせにリバイバル上映に足を運んだりしましたもんね。(かわいい)

 

そんな2020年のベスト作品は何か。ぜひ最後までお付き合い下さい。

 

 

▼2019年のベスト10はこちら(いや昨年は10作品で収めとるがな)

kuh-10.hatenablog.com

 

  

 30位『娘は戦場で生まれた』

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激しい内戦により人々が空爆やミサイル弾に怯えるシリア。ジャーナリストの女性はそこで出会った医師と結婚し命を授かるが、幸せとは裏腹に街は攻撃を受け続けるのだった。

 

アカデミー賞を有力視する声もある本作。惨状をカメラに収めることで“生”を発信するドキュメンタリーには、静かに訴えかける力強さが感じられます。

この確かな現実をそこで生きる人が撮影しているからこそのリアルであり、苦しくも目を背けることは出来ない、そんな1本です。

 

 

 29位『ソウルフルワールド』

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ジャズミュージシャンを夢見る音楽教師が迷い込んだのは、生まれる前のソウルがどんな自分になるのかを決める世界。元の自分に戻るために奮闘していく中で、何気ない日常への価値観が変わっていく。

 

生きる意味を見失う現代人を優しく後押しし、肯定してくれるような包容力のある作品です。

作品が伝えたいメッセージが等身大で、だからこそ多くの人に刺さるのではないでしょうか。

 

登場するキャラクターの造形も独特で軽快な動きが楽しい。アニメーションとしても一級品です。

 

 

 28位『マ・レイニーのブラックボトム』

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1927年、「ブルースの母」と称された歌手とバンドメンバーによるレコーディング現場。人種差別が色濃く根付くシカゴでそれぞれの想いが音楽に乗ってほとばしる。

 

ワンシチュエーションでの進行で会話劇が中心となる作風。だからこそ役者の熱を強く感じたし、芸術性の高い1作であることは間違いない。

 

本作は今年8月に癌で亡くなったチャドウィック・ボーズマンの遺作です。人種の壁を打ち破ることを作品を通して訴えてきた彼の確かな信念が見て取れる、本当に圧巻の演技でした。

 

 

 27位 『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

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養護施設で暮らすダウン症の青年と孤独な漁師とが出会い生まれる優しい友情と成長をユーモラスに描く。

 

題材からも重めな作風なのかと思いきや決してそんなことはなく、緩やかで軽やかな雰囲気が終始漂います。

 

映し出される自然の情景や水音が非常に美しく、育まれる友情と相まって温かな気持ちにさせられる作品でした。

 

 

 26位『エクストリーム・ジョブ』

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実績を残すことができず解散の危機を迎える警察の麻薬班が、張り込み捜査のために犯罪組織のアジト前のチキン屋を買収する。組織にチキンを宅配するために営業を始めたものの予想外の大繁盛となり、徐々にチキン屋の仕事に追われることになっていく。

 

軽快なアクションコメディーで、ウィットに富んだシーンも多く気楽に見られる韓国映画です。
とにかく登場人物らのキャラが立っていて、それが結末に向かうに連れて上手く作用し着地していく清々しさもあります。

 

 

 25位『ようこそ映画音響の世界へ』

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スター・ウォーズ』『ジュラシック・パーク』『トップガン』…あれらの名作映画の音響は果たしてどのようにして生まれたのか。著名な映画監督や音響技術関係者らによる音作りの体験談へと迫るドキュメンタリー。

 

ハリウッドの歴史と共に振り返る音作りの世界と関係者の妥協なき職人技に胸が熱くなります。

これまで観ていた映画への発見があったことはもちろん、今後の映画の見方も変わってくること間違いなし!

 

 

 24位『グッド・ボーイズ』

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小学6年生の仲良し3人組が同級生からパーティーに誘われ、そこで行われるキスゲームで意中の子との初キスをゲットするべく奮闘するコメディ。

 

とにかく脚本が上手い!下ネタ満載ながら少年達が少しずつ成長する様を痛快に描いていて、自分が子供の頃に友達と遊んでいた記憶も思い起こされ心をじんわりさせられる感覚も。

 

大人になっていく中で抱える悩みや葛藤がすごくリアルで、それでも親友との友情はきっと一生ものなのだろうと思うと、3人組の関係が実に美しく映りました。

 

 

 23位『スウィング・キッズ』

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朝鮮戦争真っ只中、巨済島捕虜収容所に新たに赴任した所長がイメージアップを図り捕虜によるダンスチーム結成計画をあげる。身分も国籍も違う5人が『スウィング・キッズ』として目覚めていく。

 

ダンスシーンだけでも観る価値があるレベルで高クオリティー。そこに戦争の要素をきちんと根付かせて、イデオロギーが何を生んだのかと考えさせられます。

 

 

 22位『音楽』

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3人の不良高校生が思いつきでバンドを組んだことで喧嘩まみれの日常に変化が生まれていく。

 

4万枚以上の作画をひとりで描き、制作に7年以上の年月を費やされたことでも話題になった本作。小規模上映から始まり、口コミが広がったことで拡大していってロングランとなりました。

 

脱力感のある日常とシュールなギャグ、そこに全身全霊をかけた演奏描写のギャップに痺れる怪作でした。

 

作画枚数の多さが伺える中に製作陣のこだわりが垣間見えて脱帽。繊細な風景画にも見惚れ、目と耳で楽しめる映画でしたね。

 

 

 21位『きっと、またあえる』

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病院に担ぎ込まれた受験生の息子を想う一心で父親がかつての旧友との思い出話を語っていくことで、人生における大切なものに気づいていくハートフルストーリー。

 

来ました今年のインド映画枠。メッセージはシンプルでありながらまっすぐに突きつけてくるし、登場人物が純粋無垢で魅力に溢れた人ばかりで心温まる物語でした。

鑑賞後はきっと誰かに会いたくなる、笑って泣ける作品です。

 

 

 20位『カセットテープ・ダイアリーズ』

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パキスタン人の移民である少年は厳格な父親の方針に雁字搦めになる日々を送っていたが、友人にすすめられた音楽との出会いをきっかけに生き方が変わっていく。

 

地域に根付く人種差別や貧困問題を切り取りながらも苦悩にもがく若者に手を差し伸べる音楽の力を強く感じられる作品でした。

 

すごく前向きになれるし、自粛期間中の鑑賞だったこともありライブ欲を掻き立てられる作品でしたね。

 

 

 19位『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』

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家族を鬼に殺され唯一生き残るも鬼となった妹を人間に戻す方法を求める竈門炭治郎は次なる任務のため無限列車に乗り込む。一行は炎柱である煉獄杏寿郎と合流し、鬼を追っていく。

 

2020年の顔とも言える鬼滅の刃。劇場版の公開後には本作の話題を聞かない日はないのではと思うほど、職場でもプライベートでも話題に上がりますもんね。

 

火付け役となったアニメのクオリティは増すばかりで、息をつかせぬアクションは圧巻。キャラクターのバックグラウンドも原作から更に感情を助長させる演出が見事でした。

これほどのクオリティで映像作品として展開されるなんてファンにはたまらないのだろうと思います。

 

 

 18位『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』

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成績優秀な少女がアメフト男子からのラブレターの代筆依頼を受けることで始まる恋愛模様を描く。

 

プロットとしては王道を外さないんですけど、哲学や宗教、LGBTといった要素を織り交ぜ作品に深みが生まれていました。

演出面も巧妙で登場人物それぞれの感情を優しくも切なく描き切っていたのが変に刺さりました。

 

 

 17位『レ・ミゼラブル

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犯罪防止班に赴任してきた新人警官が同僚とのパトロール中に少年が引き起こした出来事をきっかけに騒動に巻き込まれていく。あの有名な『レ・ミゼラブル』の舞台で、深刻化していく事態を痛烈に描く1本となっている。

 

本作はカンヌ国際映画祭において、あの『パラサイト 半地下の家族』とパルム・ドールを競い審査員賞を受賞しました。

 

様々な人種が住まうコミュニティにおいてそれぞれの主張が混在した結果、他人事ではない世界の現状を映し出す緊迫感が凄まじい。

小説の文言の引用や登場人物の視点の撮り方にも映画としての上手さを感じます。

  

 

 16位『シカゴ7裁判』

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ベトナム戦争の徴兵制度に反対する市民らによる大規模なデモ活動が行われるも、警察と市民が衝突し多くの負傷者が出てしまう。それを煽ったとされる罪でデモ首謀者である7人の男が起訴されたことで、後世に語り継がれる裁判が開かれていく。

 

難しい題材なのではと構えていたものの歴史的背景をふまえながらデモ首謀者の思想をそれとなく提示しているので、とてもスマートに仕上がっていました。

 

当時のアメリカ国民の想いを象徴するシーンの見せ方や、所々での登場人物の言動とラストの展開が繋がった時の爽快感などからも作品としての上手さがひしひしと感じられます。

 

 

 15位『ナイブズ・アウト』

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世界的に有名なミステリー作家が自身の誕生日パーティーの翌朝に遺体となって発見される。容疑者は館内にいた者全員。一見自殺に思われる事件だが、匿名の依頼を受けてやってきた探偵が捜査を始めると事態は思わぬ方向へと進んでいく。

 

クラシカルなミステリーを軸にしながらも移民問題や経済格差といったテーマも内包しており、推理要素と相まって余計なことを考えさせる間を与えない作りが凄かった作品。

 

そしてそれは衣装や美術、音楽へのこだわりが強く関係しているように思いました。相当なこだわりを持って作られたからであろうことが強烈に感じられるんですよね。

古風であり現代的でもあり、それでいてミステリー作品らしく程よく哀愁もあり、満足できる1作でした。

 

 

 14位『劇場版 SHIROBAKO

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高校のアニメーション同好会で将来アニメを作ろうと約束した少女5人。彼女らはそれぞれのやり方でアニメ制作に携わるようになり、多忙な日々を送っていく。本作はそんなテレビシリーズのその後を描く。

 

劇場版制作を任された宮森とスタッフ達の奮闘を、またスクリーンで観られる喜びを噛み締めながらの鑑賞でした。

 

業界の現実であろう苦難に対する描写が多く、とことんリアルを追及した内容になっていました。テレビシリーズよりも一歩踏み込んでいるようにも感じます。

 

キャラクター達の成長も目の当たりに出来たのは良かった。頑張る人達ってかっこいいし可愛いです。

 

 

 13位『はちどり』

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家族や友人との関係に悩み孤独に生きる中学2年生の少女が、思春期特有の想いを抱えながらも憧れの存在との出会いを経て生きる日々を描く。

 

学歴社会で男性が優遇されがちな韓国の文化や上手くいかない対人関係に少女が静かに感じる鬱憤。それらを淡々と描く時間が続くからこそ、感覚が研ぎ澄まされて物語の動向に敏感になれます。

 

小さな羽で蜜を求めて飛び続ける蜂とも鳥ともいえる動物を指すタイトルは、大人と子供の狭間である少女の存在にピッタリです。

 

 

 12位『BURN THE WITCH』

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ロンドンで異形の存在とされるドラゴンを相手に、魔女と魔法使いがそれらを保護・管理する世界。人とドラゴンが共存する<リバース・ロンドン>を舞台に、2人の魔女が躍動する。

 

恐らく今年最も熱量を持って追いかけた作品ではないかと思います。原作は毎週楽しみに読んでいましたし、映画の公開もとにかく心待ちにしていました。

 

あれだけの面白い作品を「動かして喋らせる」のであればつまらないわけがないんですけど、インタビュー記事やパンフレットを読めば読むほど、作り手による細部のこだわりや原作に対する忠実さが感じ取れたのがとにかく嬉しかったです。

原作の久保先生がネームを作っていた時からスタッフに内容を共有しオーディションや収録もほぼ立ち会って詳細をチェックしていたとのことで、納得のクオリティ。

 

ロンドンの背景や街並みの美しさが作品への没入感を引き立てていましたし、音楽の彩りがストーリーの緩急を生んでいて良かった…とてつもなく映像化の意義があったと感じる映画でした。

 

 

 11位『1917 命をかけた伝令』

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第一次世界大戦。1600名の兵士の命を救うため、伝令を届けるべく2人の兵士が大戦の最前線へと走る。

 

ワンカット風の撮影が話題になった本作。もちろん驚きの演出の数々なんですけど、観客に何かを思わせる自然や風景の象徴的なカットが印象強く、奥行きのある作品に仕上がっていました。

 

何が起こるにも突発的なのが戦争の無慈悲さを強く物語っていますし、戦争を知らない時代に生きているからこそ訪れる虚無感もあって、考えさせられる映画でした。

 

 

 10位『リチャード・ジュエル』

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アトランタでの爆発テロ事件にて多くの命を救った警備員が犯行の容疑にかけられる。世間の目に晒される中、彼の無実を信じる母と弁護士と共に異を唱えていく。


物語はわりと淡々と描かれるのですが、だからこそ人物の心情描写がじわじわと沁みるんです。メディアのリテラシーや、人の側面を知らない中で抱く偏見に対して警鐘を鳴らすメッセージ性も垣間見える、そんなイーストウッド監督らしさが光りました。

 

彼の監督兼主演として製作され、自らの生き方の贖罪とも捉えられる『運び屋』の昨年の公開を経ての本作だと思うと、考えさせられるところもありますね。

 

 

 9位『タイラー・レイク -命の奪還-』

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数々の激戦を乗り越え現在は裏社会の任務を請け負う男が、連れ去られた麻薬王の息子の奪還任務に挑む。ダッカの市街地を舞台に、警察やギャングから逃れながら少年の命を守り抜けるのか。

 

ヒット作に多く関わってきたアクションコーディネーターらがスタッフとして集っていることもあり、肉弾戦やカーチェイスがとにかくスタイリッシュで圧巻。

アクションシーンでは基本的に主人公の後方からカメラを回しているので、まるでシューティングゲームの画面のように映り込み、緊張感も楽しめます。


更にそれらをワンカット風に、時に戦闘する角度に合わせグリグリと動かすカメラワークが生み出す臨場感には舌を巻くばかりです。続編の製作も決定しているので、そちらも楽しみ。

 

 

 8位『黒い司法 0%からの奇跡』

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黒人差別が色濃く残る1980年代アメリカのアラバマ州。正義感の強い新人弁護士が、殺人罪に問われる黒人の冤罪を信じて立ち上がる。

 

人種差別を描いた映画は数多くありますが、これほどの差別や冤罪がつい30年ほど前に平然と起こっていた事実を改めて突きつけられるととてつもなく恐怖を覚えます。また、実話を元にしているということが登場人物の心情をより深く考えさせると共に、強く感情移入させられるんですよね。

 

強い正義と信念が人の人生を大きく変えられると奮い立たせてくれる一方で、自分が同じ立場なら立ち上がる勇気があるのだろかと心がチクリとしてしまうような1本にもなりました。だからこそ、信念に正直な主人公に惹かれます。

 

 

 7位『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』

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人間の森林破壊により居場所を奪われてしまった妖精達。そこに手を差し伸べる妖精と、突如現れた人間の執行人による互いの正義がぶつかり合っていく。

 

今年鑑賞数が最も多い映画なんですが、1本の映画としてとにかく洗練されているんですよ。完璧だと言ってもいい。

 

まず色彩の美しさがとにかく際立ちます。ギャグシーンも多めなんですけどストーリーをぶつ切りにしない上手い配分で実に小気味良く物語が進行していきます。

 

そして何より圧巻のバトル描写。スピード感はもちろん、シチュエーションがどんどんと変わりキャラクターが使う能力も様々なので飽きることが一切ない。終始世界観に引き込まれる作りでした。

 

 

 6位『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

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個性豊かな四姉妹のそれぞれの物語を紡いでいく名著『若草物語』を映画化。姉妹らは各々の幸せに向かって壁にぶつかりながらも助け合い突き進んでいく。

 

女性の自立をひとつのテーマとしながらも強い女性像を理想として掲げるのではなく、苦悩の末に選んだ道に幸せを見出すことを肯定してくれる、そんな優しさに満ちた1作です。

現代にも通じる題材ですし、幾度となく映像化されている作品を今映像化した意義もしっかりと感じました。

 

また、美術がとても綺麗で衣装も目を見張る美しさで、女性の麗しさや儚さがより映えていたと思います。キャスト陣も旬な若手が多く見ていて楽しかったです。

 

 

 5位『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

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かつては武器として扱われていた元軍人の少女が終戦後に手紙の代筆業を行う中で大切な人からの「愛してる」の意味を追求していくアニメシリーズの完結編。

 

劇場版の公開、本当におめでとうございます。制作を進めることすら困難な中で作品を作り上げた方々の想いが随所から感じられる完結編でした。

 

人それぞれに「愛してる」がある、そんな当たり前のようでこの上ない尊さに改めて気付かされました。

生を全うし、周囲を幸せにする。そのためにまずは自分が幸せであること。  言うのは簡単でもこれってすごく難しいことだと思いますが、奮い立つ勇気をもらえる作品です。

愛を知りたいヴァイオレットに多くの愛を教えてもらいました。

 

 

 4位『TENET』

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特殊部隊に参加していた名もなき男がミッションの最中で昏睡状態に陥る。目覚めた男は第三次世界大戦を防ぐとミッションを与えられ、TENETというキーワードと共に“時間の逆行”にその身を投じていく。 

 

一度の鑑賞で全てを理解することは出来ず置いてかれてしまった部分も多々あったのですが、それでもすごいものを目撃したというのが率直な感想でしたね。結局複数回映画館で観ましたが、円盤化されたら改めて鑑賞することでしょう。

 

謎が明かされていく度にノーラン監督に時間を掌握されている感覚に陥りつつ、それがすごく気持ちいい。理解が追いつかなくなってきた焦燥を感じると普通なら不快感にも繋がり兼ねないのに、むしろそれを上回るほどの興奮。

 

物語はどんどん進んでいくのに、観ている側は目の前で起きている事象を理解しようと記憶を遡っていく…まさに脳内でも時間の逆行。

作品の緻密な作りに圧倒されました。

 

 

 3位『パラサイト 半地下の家族』

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全員失業中で半地下住宅で暮らす貧しい家族が、IT社長一家が住まう豪邸と徐々に関わりを持っていき、次第に誰もが予想しない事態へと発展していく。

 

今年度アカデミー賞受賞おめでとうございます。アジア映画初の快挙に、大いに盛り上がりましたね。

 

格差社会を階段や高低地で表す画の映え方や、終盤に向けての伏線の散りばめ方が実に絶妙です。面白かったのだけど、それ以上に凄かったという感想が真っ先に出てきました。

ユーモアあるシーンがじわじわきたりと発見があって、それでいて言語化が難しい作風で新しさ目白押しの社会風刺作でした。

 

 

 2位『フォードvsフェラーリ

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栄光のレース「ル・マン」で絶対王者フェラーリ社に挑むフォード社の男達の戦いを描く。限られた資金と時間の中でいくつもの壁が立ちはだかる中、男達は勝利を手にすることが出来るのか。

この作品、とにかく熱いのなんの。臨場感溢れるカメラワークやエンジン音によってレースシーンはまさに自分がその場にいるかのような熱気があり、戦況に一喜一憂してしまう。その熱さは人間関係の描き方からも感じられますが、それでいて友情や家族愛の描き方には美しさもあります。

 

今年初鑑賞作品だったのですが、鑑賞後に今年のベスト級である確信がありました。

 

 

 1位『ジョジョ・ラビット』

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第二次世界大戦下のドイツで生きる気弱な少年が空想の友人ヒトラーの助けを借りながら自らの弱さを克服し成長していく様をコミカルに、そして時にシリアスに描いていく。

 

上半期を終えた時点で年間ベストになりそうだという予感はあったものの、やはり迷わずこの順位に据えました。

序盤のカメラワークやアングル、キャラクターのセリフが中盤以降に強い意味を成してくる小気味良さがとにかく痛快。そしてそれを少年の成長物語としてのアプローチを示していくのですが、キャストの個性がすごく光るんですよ。

 

印象に残るキャストはたくさんいたのですが、やはり主役の彼の存在感は素晴らしかったです。主役のオーディションは数ヶ月に及び難航したそうなのですが、彼が来た途端に即決だったそうで。今後が楽しみな役者さんです。

 

 

そんなわけで私的2020年ベスト映画は『ジョジョ・ラビット』でした!全人類見てくれよな!

 

来年は公開延期作品が順次ロードショーとなりますし、多方面から気になる続報も出てきており今から楽しみです。

 

来年も素敵な作品に出会えることを願って。