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映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

私的2019年映画ランキング:ベスト10

2019年も様々な素敵な作品に出会うことができました。洋画ばかりに目がいくこともあって結局のところ劇場鑑賞は週1ペース程度でしたが、観たいと思っていた作品はほぼ鑑賞できたのではないでしょうか。

 

今年は『アベンジャーズ』『スター・ウォーズ』といった大作シリーズの公開があったり、『ジョーカー』や『IT/イット THE END』ではピエロが世間をざわつかせたり。邦画では『宮本から君へ』『蜜蜂と遠雷』などの話題作もあり、『天気の子』『空の青さを知る人よ』『すみっコぐらし』といったアニメ作品もトレンドでした。アニメといえば、ピクサーやディズニーの『トイ・ストーリー4』『アナと雪の女王2』などでは、近年スタジオが意図しているであろう、時代の移り変わりによる価値観の多様性が見られたように思います。

 

そんな注目作の多かった2019年公開の作品の中でも、特に自分が好きな映画10選について、簡単なあらすじもふまえながら残していこうと思います。独断と偏見での選定となりますので、ご容赦下さい。選出に共感してもらえれば嬉しいですし、気になる作品があればぜひ観てみてください!

 

 

 

 

 

 10位『劇場版 幼女戦記

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其れは、幼女の皮をかぶった化物ー。

 

テレビアニメ『幼女戦記』のヒットを受け、続編として展開された『劇場版 幼女戦記』。

テレビシリーズ放送当時はリアルタイムでは観ていなかったのですが、劇場化を受け鑑賞したところ、これがとんでもなかったです。

 

タイトルとキャラクタービジュアルから受けるイメージとはあまりにも対象的な殺伐とした世界観。幼い少女が戦場で無慈悲なまでに人を殺めるそのギャップにより冷たさを感じます。

 

劇場化までこぎつけた凄さを考えると作り手の皆さんに頭が下がるんですが、この作品はとにかく大画面大音響との相性の良さが尋常ではないんですよ。音響へのこだわりが凄まじく、特に戦闘中の射撃や砲弾の轟きが身体にずんずんと響く。まるで自らが戦場にいる兵士だと錯覚してしまうほどにとてつもない臨場感です。

 

そして、主人公ターニャとその敵メアリーのそれぞれの正義のぶつかり合いも見どころのひとつです。この2人のキャラクターって、普通だったら主人公と敵の立場が逆だと思うんですよ。それをあえてこの構図でやろうとする、やれてしまうカルロ・ゼン先生の上手さが際立ちます。

 

さらには声優陣の身を削るかのような迫真の演技にも心が震えました。日常パートから戦闘シーンに至るまで、本当に圧巻です。まだ観ていない人はテレビシリーズから追う価値ありますよ。

総員傾注!

 

 

 

 

 

 9位『THE GUILTY/ギルティ』

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ある事件をきっかけに警察官の一線を退き、緊急通報指令室のオペレーターとして職務を全うする主人公の元に、今まさに誘拐されているという女性からの通報が。

目まぐるしく状況が変わっていく中、電話からの声と音を頼りに誘拐事件を解決することができるのか…そんな緊迫感のあるデンマーク映画です。

 

本作は実験的な映画が数多く集まるサンダンス映画祭にて観客賞を受賞したほか、ポスターの通り北米の大手レビューサイトRotten Tomatoesでも公開当初は満足度100%と驚きの支持率を叩き出すなど、注目を集めました。

 

電話を通して「罪」を探っていけばいくほど、1本の映画として訴えている「罪」が紐解かれていきます。もしかしたら、鑑賞者にも「罪」を感じさせる作品かもしれません。その意味はぜひ実際に作品を観て、確かめてみて下さい。

シャープで繊細さを感じるワンシチュエーションスリラーです。

 

 

 

 

 

 8位『グリーンブック』

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黒人のピアニストと白人の用心棒が人種差別の色濃く残るアメリカ南部を巡るロードムービー。慢性的に蔓延る黒人差別をシリアスに描く一面がありながらも、時にはコミカルな笑いも忘れない、そんな小気味良い作品になっていました。

 

価値観が正反対のふたりが衝突しながらも互いを尊重し仲を深めていく様は、心にほんわかとした暖かさをもたらしてくれます。

 

アカデミー賞作品賞を受賞した本作は、実話を元にしています。だからこそ時代背景や登場人物の心境に馳せる想いが強くなるというか。そんなところもノンフィクションならではの良さだと思ってます。

あと、無性にフライドチキンが食べたくなる。

 

 

 

 

 

 7位『バジュランギおじさんと、小さな迷子』

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インド映画って定期的に話題作が出てくるんですよね。『ダンガル きっと、つよくなる』だったり、『バーフバリ』だったり、『きっと、うまくいく』だったり。

本作もインドでは2015年の公開だったのですが、世界中でヒットを飛ばして今年ついに満を持して日本で封が切られました。

 

おじさんと小さな女の子。2人が同じ方向を見て笑顔を見せるポスターからは既に心温まる雰囲気が漂ってるんですよね…そしてそれを裏切らないのがまた見事。

主人公バジュランギが迷子で口のきけない女の子を家に帰そうと奮闘する物語なのですが、登場人物の誰もが優しさを兼ね備えており、それが冒頭から終盤まで存分に感じられる。

 

宗教を超え、国境を超え、愛のためになんて言ったら小っ恥ずかしいですが、でも確かにバジュランギを動かすものは愛なんですね。ボリウッドらしい演出も含めてとても良い1作でした。

 

 

 

 

  6位『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

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MCUフェイズ3の最終作品となる本作は『アベンジャーズ:エンドゲーム』の後の物語となります。

トム・ホランド演じるスパイダーマンがあまりにも魅力的であり人一倍感情移入してしまうのですが、ヒーローとしての葛藤や学生らしさ溢れる甘酸っぱい恋模様に終始心を鷲掴みにされます。

 

トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールドが演じてきたこれまでのスパイダーマンを踏襲しつつ、しっかりとMCUスパイダーマンとしての成長物語になっていること。ピーターを支える周囲の人々の魅力もきちんと描いていること。継承としてのヒーロー物語となっていること。重すぎず軽すぎず、スパイディの色を出しながら心に訴えかけてくる1作でした。

 

次回作への期待も膨らむばかりですね。

 

 

 

 

 

 5位『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』 

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全日本吹奏楽コンクールへの出場を果たしてから数か月後、2年生になった黄前久美子の次の曲が始まるのです。

 

響け!ユーフォニアム』シリーズがとにかく好きでたまらないのですが、新作映画ということで冒頭から胸が熱くなるし、2,3年生の成長もひしひしと感じ嬉しいことこの上ないんです。吹奏楽部に入部してくる1年生が抱える様々な感情と、それに向き合う上級生の人間模様には心が震えます。

 

テレビシリーズでじっくりと描いてほしかったというのは欲張りなのかもしれないのですが、そういった感情を抜きに、劇場版としてまた久美子の新たな物語を紡いでくれたことに感謝したいですね。

最後に、京都アニメーションで起こった理不尽で痛ましい事件には憤りを覚え、またこの深い哀しみをどう言葉にすればいいのか未だに分かりません。それでも作品に想いを乗せて命を吹き込まれた方々がいる事実だけは忘れたくないです。円盤が発売された暁には何度だって鑑賞しよう、そんな所存です。

 

 

 

 

 

 4位『ホテル・ムンバイ』

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2008年にインド最大の都市ムンバイで同時多発的に起こったテロ事件を題材とする、実話を元にした作品です。

 

駅や病院、レストランといった人が多く集まる場所で武装したテロ集団が無差別に銃を乱射し多くの人々を巻き込んだこの事件は、死者170名以上、負傷者230名を超える大惨事となりました。この事件をホテルでの出来事にフォーカスして、宿泊客らを無事に逃がそうとするホテルスタッフの勇気ある行動をとことんリアルに追求しながら描き切ります。

 

アンソニー・マラス監督の意図として「国籍も文化も違う人々が団結して最悪な状況を乗り越ようとする事実を映画を通して伝え、後世に残したかった」というのがあったそうです。なるほど、それらも納得の臨場感と丁寧な作りこみでした。

ホテル内の人々もテロリストも描かれ方としてはとても切なく儚いもので、だからこそフォーカスされていた登場人物ひとりひとりの言動が心に沁みます。

 

かなり緊迫したシーンばかりで気を緩められない時間が続きますが、鑑賞後に暗い劇場から陽の当たる外に出た時に、当たり前の日常の平和を噛み締めるみたいな…これまで味わったことのない感覚に陥りまして。自分でも驚いてしまうほど新たな境地でした。

 

 

 

 

 

 3位『スパイダーマン:スパイダーバース』

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スパイダーマンといえばお馴染みとなっているのがピーター・パーカーですが、その彼が亡くなった世界を舞台とし、本作で黒のスーツを身に纏うこととなるのは黒人のスパイダーマン、主人公マイルスです。

 

マイルスがスパイダーマンとしての役割を受け継ぐまでの苦悩と葛藤を描く物語は決して複雑ではありません。王道である面白さ、だからこそすごいと思いました。これってなかなか難しいと思うんですよね。

一歩間違えれば誰もが予想しうる展開と見せ方にしかならず、観客の時間を拘束する映画というコンテンツにおいて飽きを感じさせる致命傷に繋がりかねません。

そうならないラインで細やかなバランスをうまく取りながらキャラクターの成長物語とアニメカルチャーとの親和性を絶妙に描き、成立させているのが見事だなと感嘆した1本でした。

 

さらにアニメーションとしても本作は革新的でした。

アメコミ風の吹き出し演出や色合いとタッチ、固定カメラでのモーション、唐突な画面分割、2Dでありながら配色による微妙なずらし…挙げていけばキリがないほどの技術を投じ続け視覚的に終始面白い作りとなっておりまして。

場面によっては静止画で止めて1枚絵でも表現しきるなんてこともあり、まさにマンガをそのまま映像にしたような映像。疾走感と映像の奥行きを持たせてカットの数々でスパイディアクションとの相性が抜群で前のめりになれる作品でした。

 

スパイダーマンらの画風が異なるにも関わらずひとつの世界にまとめあげ、キャラクターが動いてもしっかりとスクリーンに馴染み、周りのタッチと遜色ない仕上がりとなっているのが見事なんですよ。

声優陣も非常に安定感があり、スパイダーマンを知らなくても十分に楽しめる作品です。

 

 

 

 

 

 2位『運び屋』

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麻薬カルテルからも一目置かれる凄腕の運び屋、その正体は90歳の老人。そんな“実話”を元にしていた本作で監督・主演を務めるのはクリント・イーストウッド

 

イーストウッドの監督作は昨年の『15時17分、パリ行き』以来となりますが、監督と主演の両方を務めるのは『グラン・トリノ』以来実に10年ぶりということで、数多くの実話を元にした作品を手掛けてきた彼の手腕に期待も高まる中で鑑賞しました。

 

公開前の重苦しい予告とは裏腹に、蓋を開けてみれば常時明るい仕上がりで物語は進行します。イーストウッドらしく、差別問題やアメリカンドリームをテーマとしながら、実話ベースという触れ込みから感じる程よい緊張感が作品に深みを与えていました。

 

個人的にイーストウッド作品は相性が良いと自負していますが、巨匠と言われる所以を見せつけられる塩梅に仕上がっています。

 

 

 

 

 

  1位『アベンジャーズ/エンドゲーム』

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いや、何の捻りもないんかい!wってね。しかしながら、ランク付けをするにあたりいくら思考を巡らせても、今年最も心を掴まれたのはどうしたってこの作品だったんですよね。

 

1本の映画として同じランクになるのだろうかとか色々考えたんですが、この『エンドゲーム』はもはやMCU過去作とは切っても切れないわけで。

札束で殴ってくるアクションや映像だけでなく、ヒーローたちの内面を掘り下げたドラマ。特にアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーのいわゆるBIG3にフォーカスさせながら、脇を固めるヒーローらの迷いや葛藤をもまとめあげアッセンブルさせる技量よ。

 

シリーズの何気ないシーンやセリフに散りばめられた伏線をこれでもかと回収し、およそ10年間積み重ねてきたものの底力を感じる幸福な3時間。決して大袈裟ではなく、こんな映像体験は生きているうちにあと何回できるのだろうかと思わされる作品でした。

 

 

 

以上、個人的2019年映画ランキングベスト10でした。

どの作品をどの位置にしようか迷いましたが、それだけ豊作の年だったのではないかと思います。

 

そして最後に、番外編としてもう1作品だけ。あらすじを見てからの期待感と俳優陣のハマり方、作品として全面に出すわけではないのですがグッとくる熱さが印象的でした。

 

 

 

 

 

 番外編『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』

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好きな俳優は誰ですか?

そう聞かれたら僕が真っ先に挙げる俳優が、ジェシー・アイゼンバーグでして。彼は、Facebookを創設したマーク・ザッカーバーグのその立ち上げと発展を描いた『ソーシャル・ネットワーク』で脚光を浴びることとなり、今年は主演作の『ゾンビランド:ダブルタップ』が10年ぶりに続編として公開されました。

 

彼の知的なオーラと代名詞ともいえる早口演技。時には秀才、時にはギャグキャラ、時には童貞を演じる幅の広さ。そのハマり具合。とにかく引き込まれる役柄が多いんですよ。観ているだけで感情を寄せてしまう。そんな彼のらしさ溢れる演技を感じられたのが本作です。

 

株の取引にあたり、ミリ秒(0.001秒)の差で桁違いの損得が出ます。このミリ秒の差を埋めるためにニューヨーク証券取引所の1600km先にあるカンザスのデータセンターを直線距離でケーブルを敷き、最短アクセスを可能にすることで莫大な収益をあげようと計画する男達の姿を描くのが本作です。

 

ケーブルが通る土地を所有する1万件もの物件の買収、山や河の掘削工事、ミリ秒短縮のアルゴリズム開発など困難な問題に立ち向かう主人公たち。無謀ともいえるプロジェクトにどう立ち向かうのか、男達の生き様に注目の作品となっています。

 

主人公ヴィンセントが相手を丸め込む交渉や行く手を阻まれても真っ直ぐ突き進むそんな鬼気迫る演技が抜群に良いんですよ。『ソーシャル・ネットワーク』然り『グランド・イリュージョン』然り、冷静に状況を判断し早口でまくしたて相手に考える間も与えず自分のペースに引き込むキャラクターが本当に良く似合います。好きです。

 

 

 

そんなわけで番外編含めて11作品でした。ちなみに次点で『ジョーカー』『マリッジ・ストーリー』『イエスタデイ』といったところでしょうか。どれも素晴らしい作品だったと思ってます。

来年も既に楽しみな公開予定ラインナップが発表されているので、今から待ち遠しいです。