2021年は昨年に比べると映画館の営業も徐々に活発化していき、公開延期となっていた作品も少しずつ日の目を見るようになってきたように思います。
今回は2021年の映画ランキングです!
昨年に比べ劇場での鑑賞本数は減ったのですが、今年も多くの良い作品に巡り会えました。
▼私的2020年映画ランキングはこちら
今年は例年に比べ同じ作品を複数回鑑賞する機会が多かったように思います。それだけ1作品の厚みがあり、満足度も高かったという気持ちの表れでしょう。
そんな2021年の映画ランキング、どうぞ最後までお付き合い下さい。
20位『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
牧場を継いだ兄弟。弟は結婚し妻とその子を連れてくるが、冷酷な兄は2人に酷い仕打ちをする。しかし兄の内に秘めた感情が彼自身の運命を変えていく。
終始不穏な空気が漂って緊張感が離れないんですけど、だからこそ俳優陣の演技が光る映画でした。
重苦しさの中で物語が進むので人は選ぶかもしれませんが、見終えると各所に散りばめられたシーンやタイトルの意味に唸らされるに違いありません。
19位『エターナルズ』
アベンジャーズが世界を守るその裏で、7000年にも渡って人類の行く末を見守るエターナルズという存在があった。地球の脅威が迫り、彼らは再び一堂に会していく。
エターナルズの面々のキャラクター性は挑戦的で独創性がありました。そこが世間の評判を左右している大きな要素でもあるようですね。
これからのMCUにどのような展開をもたらすのか楽しみになる1作でした。
18位『ラブ&モンスターズ』
地上をモンスターに支配され、食物連鎖の底辺に落ちた人類。頼りない1人の青年が生き別れた恋人に会うために危険な大自然へ身を投じていく。
勇気を出して自分の殻を破っていくことの大切さを解き、そこにモンスター要素を取り入れた、王道でありながらもまとまりのある作品でした。
良い意味で気軽に観れる1本ですので、ふとした時間にいかがでしょうか。
17位『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
平穏な日常を送るボンドの元に旧友からの依頼が舞い込む。再び任務に就くボンドだったが、やがて大きな危機に進展していきー。
クレイグボンドの最終章。
これまでに比べてややライトな描写が目立つように見受けたんですけど、時折漂う哀愁はやっぱり007特有の渋さ。
シリーズを通してボンドの考え方や生き方の移り変わりが描かれて、非常に人間味のあるボンドを見ることが出来たのは良かったと思っています。
16位『ラストナイト・イン・ソーホー』
ファッションデザイナーを夢見てロンドンのソーホーに上京した女子大生。だが夢の中で60年代のソーホーで歌手を目指す女性に出会ったことで、徐々に彼女との感覚が現実世界でもシンクロしていく。
ロンドンの街並みを鮮やかなネオンと共に映し出していく巧みな画角に目を見張る、芸術性にも富んだ映画でした。
ホラー・スリラー・サスペンスといった要素が盛り込まれながら美しさも感じられるという、不思議な感覚に陥る作品です。
15位『tick, tick... BOOM!:チック、チック...ブーン!』
ニューヨークでウェイターのアルバイトをしながらミュージカル作曲家としての成功を夢見る青年は、30歳を間近にして恋や友情に悩み自らの現状に焦りを覚えていく。
これはあのミュージカル『RENT』を手がけた劇作家の苦悩を描いた物語。
多くの人から共感を得るであろう苦悩や焦燥を丁寧に描きながらも、それらをミュージカル演出で包み込むバランスの良さ。
ミュージカル映画ってどうしても歌やダンスで物語がぶつ切りになる難しさはあるんですけど、本作ではそれを感じさせない適度な演出が感じられました。
丁寧な演出や役者の幅の広さをひしひしと感じられる1作です。
14位『マトリックス レザレクションズ』
機械との戦いから月日は流れ、救世主と呼ばれた彼は日々の生活や自分のいる世界に違和感を感じ始める。果たしてここは現実なのか、それとも。
今になって続編をやる意義があるのか、当時のような革新的な見せ方を実現できるのか。鑑賞前はやはり懐疑的でした。
蓋を開くと、メタな部分が多いので本作に何を求め劇場に足を運ぶかで評価が変わることが想像できると思いました。個人的には好きでした…!
善し悪しは分かれると思うのですが、映像技術の進歩により1作目の衝撃を求めるのはそもそも酷だと考えていたので、そこで勝負をしない作風は刺さるものがありましたね。
13位『ブラック・ウィドウ』
かつて孤独な暗殺者だったブラック・ウィドウの過去と、アベンジャーズの存在によって徐々に変わった彼女の心情をダイナミックに時にセンシティブに描く。
これまでのMCUにないシチュエーションでのアクションシーンもあれば、ファンサービス満載な場面もあって、纏まった1作だったと思います。
家族というテーマと、そこに映し出されるヒーロー/ヴィランの対立構造にもハッとさせられました。この構図の上手さが実にMCUらしく、観ていて嬉しくなった作品。
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12位『カオス・ウォーキング』
地球を離れ人類が降り立ったその星は、男性の考えがノイズとして他者に伝わる世界。女性の姿を一度も見たことのない青年が、墜落した宇宙船に乗っていた女性を守るために奔走し、やがてその星で起きた真実に迫っていく。
設定とキャスティングに存分に楽しませてもらえた本作。ノイズの視覚表現がキャストの顔と重なったりするのが気になったりCGの粗さなどから予算の低さは見て取れるものの、極限状態での人間社会の縮図をSF物語として昇華していてスリリングでした。
11位『21ブリッジ』
強盗事件が発生し、犯人の逃亡を阻止するためにマンハッタン島が封鎖される。島の封鎖が解除されるまでのタイムリミットが迫る中、警官だった父を殺害された過去を持つ刑事が事件の真相を追う。
サスペンスとしてスマートな仕上がりになっていて、アクションも程よい緊張感が漂うバランス感に優れた1作。
正義の信念を感じさせるチャドウィック・ボーズマンの目元のカットがとにかく印象的で、細かなカメラワークでスリルも余韻も楽しめる映画に仕上がっていました。
10位『ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』
ゲームマスターの手により、ゲームの中の死が現実での自らの死に直結することとなった「ソードアート・オンライン」。死と隣り合わせの世界で、プレイヤー達はそれぞれの道を往く。
リブート的な立ち位置だったので、演出面でのテレビシリーズとの違いがノイズになるシーンが多々あり初見時には思いのほか入れ込めなかったんですよね。
でもそういった細かいところを取っ払って2回3回と重ねると、キャラクターの心情が刺さってきてかなりの味わい深さがありました。音響の作り込みも素晴らしかったです。
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9位『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
音を立てることが死に直結する世界で新たな避難場所を求める家族。迫る脅威への対抗策を打ち立てるべく、次なる目的のため危険な地へと踏み込んでいく。
前作に比べて音の演出がとにかく巧みで、世界観への引き込み方が凄まじい。
子供達の成長過程もきちんと描かれており、且つ風呂敷を広げ過ぎないのも好印象。続編として異議ある1作だったと思います。3作目への期待も高まる見事な作りに脱帽です。
8位『ファーザー』
認知症を患った老人と、世話をする娘。介護士を拒否し続ける老人だが、自分の認識と他者の言動には相違が生まれていき混乱の日々が続いていく。
ヒューマンドラマなのですが認知症を追体験しているかのような演出の上手さがとにかく際立ちます。自分は誰と話しているのか、言われた言葉はいつ誰からのものなのか、次第に分からなくなる苦しさが付きまとう…。
ミステリーを見ているかのような空気を漂わさながら、しっかりと現実との地続きである怖さや悲しさが伝わり、俳優らの極上の演技も相まって没入感たっぷりでした。
7位『クーリエ:最高機密の運び屋』
核戦争勃発の寸前まで達したキューバ危機。米ソ間の緊張が高まる中で戦争を回避するために機密情報を持ち出すべく、スパイ経験のない英国人セールスマンに白羽の矢が立つ。
史実であるがゆえの重さはあれど、それを映画として描くための美術や音楽、さらには俳優陣の鬼気迫る演技に胸を打たれる1作となりました。
画面構成や演出も光り、セリフ以上に人物の関係性や感情も豊かに表現されていて巧みでしたね。
6位『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
ホテルの駐車場係として働く男の元に、悪の道に走る父が差し向けた刺客が迫る。先祖の秘密を知った男は、父に立ち向かうべく己の過去と向き合っていく。
立体感いっぱいに見せてくるアクションが見ていてとにかく気持ち良く爽快。それでいてコメディ要素とのバランスも絶妙なのがポイント高いです。
MCUの今後を考えるとシャン・チーの合流をより楽しみにしてくれる出来に大満足でした。
5位『フリー・ガイ』
同じことを繰り返すだけの日々を送る男がふとしたきっかけから自分がゲームのモブキャラであること事実を知るも、大切な今とこれからを生きるために正義を全うしていく。
後半にかけての畳み掛けがとにかく凄まじく、ストーリーとしての納得感も心地良い本作。
この配給会社・スタッフならではのパロディなども爆発力があるんですけど、決して単なるファンサービスに留まらない物語構造やメッセージ性にも嬉しさを覚えました。
4位『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』
トップスタァを目指す舞台少女達。聖翔音楽学園99期生の面々は演目「スタァライト」を経て、何を感じ何を志すか。
テレビシリーズの続編の位置付けで描かれた完全新作はとにかく圧倒的でした。
失速することのないノンストップの上映時間は非常に濃く、観客が飽きることを一切許さない。何度も観たくなるその構造に、感情を動かされた人も多いはず。
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3位『劇場版 Free!-the Final Stroke- 前編』
舞台は全日本選抜から世界大会へ。泳ぐことに魅せられた者たちの青春群像劇は、やがて厳しい勝負の世界へと移り変わる。テレビシリーズの続編にして完結編。本作はその前編。
シリーズを通して積み重ねられてきたキャラクターらの関係性を惜しむことなく反映させ、感情を揺さぶりにかかる製作陣の手腕には相変わらず感嘆です。
青年が大人になる過程を描く本作は、これまでの描写を丁寧に切り取りながらも確実に階段をのぼっていて、胸にスっと落ち着く感覚が気持ち良い。キャラクターの仕草や絡ませ方も、ファンを喜ばせたいというスタッフの意志を感じて思わず頬が緩みました。
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2位『映画大好きポンポさん』
敏腕映画プロデューサーであるポンポさんの元でアシスタントを務める青年が映画監督を任せられ、怒涛の映画制作の日々が始まっていく。
映像作品としてのクオリティの高さがまず前提として存在する本作なんですが、それ以上に構造の緻密さと巧妙な構成に脳が揺れる…そんな魔作でした。
冒頭ではここまでの作品とは思っておらず、物語が動き出してからの引き込み方が尋常ではないんです。
作中のメタ要素を眼前の映像からリアルタイムで受け取ることに興奮度は増し、展開も早いこともあってドーパミンが分泌されっぱなしだった、まさに観るクスリ。
1位『シン・エヴァンゲリオン 劇場版:||』
フォースインパクトが収束した世界。碇シンジと彼を取り巻く人物の物語は終わり、そして始っていく。
待った甲斐のあった最終章でした。
庵野監督の状況だったり世間の情勢だったり様々な要素はあれど、このタイミングだからこその描かれ方だったんだなと強く感じています。
終わってしまった寂しさはあれど、作品を作り上げていただいたことにありがとう。
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そんなわけで私的2021年映画ランキングのベスト作品は『シン・エヴァンゲリオン 劇場版:||』でした。
まさかアニメーション映画がこれほど上位を占めるとは思わず。しかしながらどの作品も本当に素晴らしいクオリティでした。
来年も素敵な作品に出会えることを願って。