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映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

『BURN THE WITCH』読切版&1話の感想/気づけばこの世界の虜になる魔法にかかっていた

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(C)久保帯人集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会

 

久保帯人先生の最新作『BURN THE WITCH』の連載がついにスタートしたということで、当初予想していた長期連載ではなくあくまでも短期連載のようではありますが、かつて読みかじったあの世界観を再び堪能できることに大きな喜びを感じています。

 

2018年に読切版として掲載された本作は、シリーズ連載と映画化が同時に発表されました。

 

あれからおよそ2年。本日発売の週刊少年ジャンプ38号より連載スタートしたことを受け、2018年発表の読切版を読み返した後にさっそく1話のページを開いたので、読切版と1話の雑感を記しておこうかと思います。

 

ネタバレありなので、未読の方はぜひ先に本誌をお読みいただければと思います。

 

 

 

 

まずは読切版について。

2年前に幾度となく読みましたが、やはり何度読み返しても面白い。

 

久保先生の『BLEACH』以来の作品なわけですけど、キャラデザの秀逸さやコマ割りのセンス、セリフまわしやギャグのキレの良さなどとにかく「あー久保先生だなあ」と懐かしさと嬉しさの感情の波が押し寄せてきました。『BLEACH』大好きなんです。間違いなく最も読み返した漫画。

 

で、『BLEACH』とは無関係だと思われていた本作ですが、ページをめくっていくとどこか似た設定であると所々で感じなかったでしょうか。

 

はじめは思い過ごしかと思うのですが、次第にオマージュが多すぎるように感じ、最後にその世界線が同じであることが示唆されます。

 

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週刊少年ジャンプ』2018年33号より

 

「尸魂界・西梢局」の文字にハッとしましたよね。尸魂界は『BLEACH』に登場する死後の世界。のえるが電話ボックスで下りた世界は、リバース・ロンドン。ただの地下世界ではなくあの尸魂界だったわけです。(現時点ではリバース・ロンドンが亡くなった者が行き着く場所だと明言されているわけではありません)

 

そして、西梢局についてですが『BLEACH』でルキアが現世で発見された際に、「東梢局」という名が登場しました。

 

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BLEACH』第6巻 51話「DEATH 3デス3」より

 

これはつまり、尸魂界は日本だけに留まらず世界中に存在し、東洋と西洋で管轄が分かれているということです。

 

このことをふまえると、『BURN THE WITCH』に登場する世界観も『BLEACH』とリンクすることが逆説的に明らかになってきます。

 

のえるやニニーは魔女としてドラゴンを退治するわけですが、一見構図として霊を魂葬する死神のように思えます。ただ、ドラゴンが人間の負の感情を吸収し人に害を為すダークドラゴンに変貌するという点から、「ドラゴン=整(プラス)」、「ダークドラゴン=虚」が正しそうですね。

 

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BLEACH』第1巻 1話「Death & strawberry」より

 

バルゴがドラゴンと相見えたことで「ドラゴン憑き」となったのも、虚に出会ったことで死神の力を与えられた一護を彷彿とさせます。オスシちゃんが再登場しているのも、一護とコンの関係を思い起こしますよね。

 

そして極めつけのラストページ。『BURN THE WITCH』の中に『BLEACH』の文字が。

 

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週刊少年ジャンプ』2018年33号より

 

2作に感じていた繋がりがより明らかになり思わず膝を打ちました。いやこの突きつけ方…こんなの震えますって。

 

Wについている傷は、門が壊れた際に入ってしまったヒビによるものです。ここで何が起きたのかについても今後描かれそうですが、もしかしたら大きな伏線になるのかもしれません。

 

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週刊少年ジャンプ』2018年33号より

 

「この世界は終わらないー」というエピローグも、のえるとニニーの物語はもちろん、これから描く世界は始まったばかりでまだ終わらせないということを示していたのでしょう。

 

2人はどのような活躍を見せてくれるのか期待に胸が膨らむわけですが、のえるとニニーのキャラクターとしての造形がとにかく良くて魅力に溢れている。スタンプを押すだけで、2人はこんな性格だぞ!と教えてくれているかのような1コマもたまりません。

 

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週刊少年ジャンプ』2018年33号より

 

何度だって読めてしまう、圧巻の読切版。久保先生はこれを家族に読ませるためだけに作っていたなんて…世に送り出してくれてありがとうございます。

 

 

そして待ちに待った記念すべき1話。まず、読切版での世界観の説明も盛り込みつつ、短期連載ということでかなりテンポを意識しているようには感じました。

 

読切版でも触れられていたドラゴン・ロンドン・魔女などの設定部分を改めて落とし込みながら、その後のストーリーとして展開。そして読切版には出てこなかった設定や存在を明らかにしながら、今後何かが起こりそうだという予感をじわじわと感じさせてくる。余計なものを削ぎ落として研ぎ澄まされたかのような1話はさすがとしか言いようがありません。

 

しかし1ページに集約される情報量はどうしたって多くなりますよね。1話でも新情報が次々と明らかになりました。

 

まずはじめにマジックについて。

冒頭でのえるが詠唱をするわけですけど、これは『BLEACH』の死神でいうところの鬼道だと思っていいでしょう。さっそく久保ワールド炸裂です。

 

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『BURN THE WITCH』第1話「WITCHES BLOW A NEW PIPE」より

 

ここでのえるが使っているのはマジック#31「ブルー・スパーク」ですけど、この数字を鬼道に置き換えると、破道の三十一が「赤火砲」なんですよね。名前からしても色が青と赤、属性という点で見ても雷と火だとするとこの2つの技は別物のようです。ブルーから連想する鬼道といえばこちらもお馴染み「蒼火墜」ですが、「赤火砲」は『BLEACH』の原作・アニメにおいて最も登場頻度の高い鬼道なので、この31というのは使用されることの多い番号として割り振られているのかもしれません。

 

任務を遂行したのえるとニニーはリバース・ロンドンにおける報酬や実績ポイントを反映させています。数字で評価制度が可視化できるようなので、これらを元に昇格や他の隊への異動などがあるのでしょう。ニニーが戦術隊への入隊意欲に燃えているところを見ると、実績ポイントは大きな指標になるようですね。

 

2人はバルゴがドラゴン憑きというイレギュラーな形でリバース・ロンドンの保護下に置かれていることから、彼を管理する役目も担っていくことになります。ドラゴン犬のオスシちゃんの制御ができなくなったことで市民への接触危機へと繋がるわけですけど、バルゴはそのキャラクターで嫌われる存在ではないにせよ、魔女/魔法使いではない者からすれば厄介者として見られているようです。

 

ロンドンなのにオスシちゃんというネーミングとその表情、そこにバルゴの憎めない言動が重なってかなりシュール。ギャグシーンではあるのですが急にスイッチ入ってドラゴンの登場まで急展開になったりするので気が抜けないし、ギャグとバトルの温度差が展開のシリアスさを一気に引き上げるんです。このあたりのバランスも本当に絶妙で、とにかく見入る。世界に入る。

 

そのような中できちんと、しかしさらりと、「ドラゴン保険」「ドラゴトキシン」「黒化(ライツアウト)」などといった世界観の設定に触れていくのだから、その構成力には舌を巻くばかりです。

 

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『BURN THE WITCH』第1話「WITCHES BLOW A NEW PIPE」より

 

戦いの最中で場面は変わり、WB最高意志決定機関「トップ・オブ・ホーンズ」が登場します。読切版では触れられなかった存在がまた明らかになりましたね。

 

名前から察するに『BLEACH』の「中央四十六室」にあたる機関かとは思いましたが、集まる面々がどうやら各隊のトップクラスのようにも感じるので、どちらかというと「護廷十三隊」に近いのでしょうか。

 

議題としてはドラゴン憑きであるバルゴの処遇について。0話から1話までおよそ1ヶ月が経過しているようですが、その間に幾度となくオスシちゃんとバルゴによる一連の騒動が繰り返されたのでしょう。

 

この後「トップ・オブ・ホーンズ」が何かしらの決議を下してのえるとニニーが関わっていくのでしょうけど、最高意志決定機関メンバーの名前が彼ら自身または所属する隊の特性をあしらっていると思われる表記になっていたので、戦闘が行われる事態となればその全貌も見えてきそうです。

 

久保先生の伏線の散りばめ方が上手いのは周知の事実なので1コマずつ隅から隅まで舐めるように読みたい一方で、ページをめくる手がまるで止まらないというもどかしさ。

じっくり読んでいたかと思えば少しページを戻ってみたり、かと思えばどんどんとページをめくる手が早くなる…そんな久保先生の手のひらの上で踊らされている感覚を覚えながらも、非常に濃密な読切版&1話になっています。

 

また、アニメやグッズの情報なども公開されたので、この熱量のまま『BURN THE WITCH』の世界に浸ろうと思います。

 

ところで読切版でも1話でもバルゴがのえるのパンツを見ているあたり、芸が細かい…。

早くパンツ続きが見たいです。

 

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