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映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

井上織姫が照らす『BLEACH』の世界について

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最近は普段に比べて時間に余裕があるので、漫画を読む時間が増えてまして。何度目になるか分からないのですが『BLEACH』を読み返しています。

 

いつだって熱を持って没頭できる漫画が自分にとっての『BLEACH』なんですけど、それにしたって井上織姫って最強じゃないですか?

 

・明るく陽気な性格

・天然で可愛い

・友達想い

・巨乳

・運動神経が良く空手の実力者

・おっぱいがある

・学年上位の成績優秀者

・好きな人に一途

・豊満なバスト

・人一倍の頑張り屋

・胸が大きい

 

主人公の黒崎一護って目つきの悪さや派手な髪色からヤンキーに喧嘩を売られがちですけど、実は家族を大切にしていて仲間想い、芯の通った正義感に溢れる高校生なわけですよね。周りの友人もそれを知っているからこそ一護の傍にはチャドや啓吾や水色やたつきがいて、そこに織姫がいて。特に織姫は「顔が面白い」という理由から一護に好意を抱き始めるわけですけど、独特の感性はあるにしろ、一護の懐の深さを直感的に察していなければ出てこない興味の示し方なんですよね。主人公の顔が面白いから好きなんて、他のヒロインに言えますか?

 

一護が世界に必要な存在になっていく過程で織姫も能力が開花するわけですけど、その起点となったエピソードや能力自体にもヒロイン力の高さが窺えます。

 

両親から虐待を受け、18歳になった兄が織姫を連れて家を出るも、その兄も事故死。事故の日の朝、織姫は兄からもらったヘアピンが気に入らず喧嘩をしてしまい、出かける間際に「いってらっしゃい」を言えずにいたことを後悔していました。

 

しかし、一護が死神代行となって間もなく兄は虚となって織姫に襲いかかるんですけど、身の危険を顧みずに織姫はその兄すらも抱き締めて受け止めようとするんですよね。兄に心配をかけまいといつしか仏壇に手を合わせることをしなくなった織姫はまたしても兄とのすれ違いを生んでしまったものの、その包容力で兄を成仏させるのです。

 

この優しさこそ井上織姫井上織姫たる所以。辛い過去を持っていても、それを感じさせないほどに元気で無垢。彼女が「盾舜六花」の力を解放し“事象の拒絶”の能力を有するも、最も効果を発揮するのが攻撃ではなく護りと癒しに準ずるのは、彼女の人となりから来ているんですよね。兄からもらったヘアピンが力の媒介となっているのも、ふたりの絆を感じさせます。

 

そして井上織姫といえば、代表的なこのセリフですよ。

 

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BLEACH』第27巻 237話「goodbye, halcyon days.」より

 

バッッッッッッケモンかよ。

こんなこと言える高校生がいるのか?えっ?

 

なぁ一護…もういいだろ尸魂界とかどうでも。大丈夫、あそこには実は零番隊ってのがいてお空でよろしくやってるから。どうにかなるって。一護と織姫と俺とで幸せになろう。

 

そもそもこのシーンってウルキオラから虚園に来るように命令され、背けば仲間を殺すと脅されながらも「1人だけ別れを告げて良い」と言われたことで一方的な別れになると分かっていても織姫は一護の元に来るところなんですよね。

 

彼女は重傷の一護を治療するのですが、きっとその役目がなくたって別れを告げる相手は親友のたつきではなく事情を知るチャドや雨竜でもなく、一護だったと思うのです。当初抱いていた学生らしい素直な恋愛感情や憧れの念が次第に愛へと昇華していき、内気だった彼女がそれでも意を決して一護の元を訪れるわけですね。二度と会えない覚悟で一護に想いを伝える…この決断の重さと能力開花前では考えられなかった行動から読み取れる成長ぶりが何度読んでもたまらなく好き。

 

しかもですよ?ウルキオラのこと「ウルキオラ君」って呼ぶんですよ?護衛を殺して自らを拘束するような奴を君付けするという清さ。心に一切の穢れがない。世界中が井上織姫で溢れていたら戦争なんて起きないのに。

 

とはいえ一護の隣にはルキアがいることが多く共に死線をくぐり抜けてきた関係でもあるので、織姫がふたりの関係に嫉妬してしまう描写もあって。何が良いかって、織姫は嫉妬心を抱く自分に嫌気がさしているんですよね。

 

我が強くないというか、助けられる立場であることが多かったからこそいつだって人のことを考えている純粋さ。でもルキアのことも大切に想っているし、同性の友人の少なかったルキアの良き友として関係を築けている。織姫の人間関係には、そんな温かさが溢れています。

 

物語が進むにつれて、はじめは天然っぷりをこれでもかと発揮していた織姫もその奔放さは次第に影を潜めていき、真面目に悩むことが多くなっていきます。しかし、一護を想う気持ちは登場したその時から変わらず、尸魂界でも現世でも虚園でも一護のそばで戦ってきました。そのまっすぐな想いと献身的な姿勢が実を結んで花を咲かせ、最終話の展開へと発展させたわけですね。

 

一護の結ばれる相手が織姫であることは度々比喩による伏線があって、ウルキオラや愛染は織姫を「太陽」に例えるセリフを用います。

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BLEACH』第27巻 236話「The Sun Already Gone Down」より

 

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BLEACH』第35巻 313話「TO CLOSE YOUR WORLD」より

 

BLEACH』ではどちらかというと「太陽」よりも「月」の方が名称などに使われるイメージの方が強いと思うんです。月牙天衝とか。

じゃあ「太陽」は何の比喩表現で用いられていたかというと、一護の母親である黒崎真咲を指すセリフです。

 

一護や父親の黒崎一心はかつて、家族の中心だった真咲を「太陽に似ていた」と言いました。真咲といえば、一護が幼いながらに護りたいと願った人です。護りたい人、そして愛する人である真咲と同じ表現を用いられる織姫は、一護にとって護りたいだけの対象ではなくいつしか愛する人になることを示していると取れるわけですね。

 

また、名前に使われている咲という字は花を想起させるものですが、織姫の「盾舜六花」は花の精霊をモチーフとしていて、媒介となるものは兄からもらったヘアピンです。そこから切り取っても、真咲と織姫には確かな繋がりがあります。

 

真咲は一護を護るために「雨」の日に命を落としてしまいますが、織姫という「太陽」が一護の人生を明るく照らしてくれるはずです。

 

やっぱり好きなキャラクターには幸せになってほしいと思うわけで、それが叶った正ヒロインの姿には素直に喜びを感じます。今日も井上織姫が眩しい。