10versLible

10versLible

映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

『BURN THE WITCH』4話感想/おとぎ話なんてクソだからこその作品タイトル

f:id:kuh_10:20200914215200j:image

(C)久保帯人集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会

 

まずは当初広報されていた4話の連載終了とのことで、久保先生お疲れ様でした。

 

そして、4話までがSeason1となり、続く物語はSeason2以降で展開されると発表されましたね。広く深い世界観を4話で完結させるのは少々無理があるように感じてはいたものの、劇場版へ繋げていく前章のようにも捉えていたので、今回の発表は本当に嬉しく思います。

 

さて、4話の感想について記していこうかと思いますが、ここにきて展開のギアが加速していて、ページをめくる度に終始胸が踊りました。

 

逃げた先でブルーノに見つかったのえるとニニー。3話の最後のコマでも鳴き声が響いていたこともありこの場にエリーが現れることは予想できたものの、エリーはブルーノの攻撃の手から逃れるため「透色竜鱗(ステルス・スケイル)」を用いて一同を驚愕させます。ブルーノの言葉から、これは自身の羽や鱗が透明になる性質なのではなく、そうさせる術を発動しているようです。

 

さらに月光に照らされて羽化し6本指を持つことから、エリーは「童話竜(メルヒェンズ)」であると判明します。元々のフォルムは骨ばっていたこともあり姿の変わったエリーの神々しさに一気に拍車がかかりましたが、ロンドンの背景が妙に合い、実に美しいですね。

 

形や大きさが変わり冠の形を模したようなツノを持つエリー。舞台がイギリスであることからも王室に由来するものの登場はある程度予想できましたがエリーという名前はエリザベス女王からきているのかもしれませんね。

 

童話になぞられて名付けられた7頭の竜を指す「童話竜(メルヒェンズ)」。その中でもエリーは、月光で羽化して夜の間だけ成竜になる「シンデレラ」のようですが、さすがは童話から名前がとられただけあって、戦う様子からも分かるように辞書に載った情報は不確かなものもあるようです。

 

羽化する過程やその姿など特殊な生態からもどちらかというと保護すべき対象であるようなイメージを持ちましたが、ブルーノはそれを「ダークドラゴンの始祖」、「邪竜指定」、「永久討伐対象」、「存在不詳の人類の敵」と呼ぶんですね。

 

リバース・ロンドンの誕生以前から存在すると言われる「童話竜」がそのように呼ばれているということはつまり、はるか昔のイギリスで大災害またはそれに近しい出来事が「童話竜」によって起こされたことを指すのではないでしょうか。

 

“リバース・ロンドンの誕生”という言い回しから、元々あった世界を見つけたわけではなくてゼロから生み出した空間がリバース・ロンドンなのだとすると、ドラゴンや魔法などの異形や未知なるものがトリガーとなって創造されたのがリバース・ロンドンであるともとれないこともないです。

 

完全に憶測の域を出ないのですが、そういったリバース・ロンドンの誕生や人間に危害を加える類のドラゴンの凶悪性といったことを、裏側の人間はある程度叩き込まれるのかなと。シンデレラがブルーノへ反撃することもなくニニー達の方へ向かってきたことに対し、メイシーは「あたしに会いにきてるのかも知れない」と言いますよね。ドラゴンが寝食を共にした相手の元を訪れるというのも、3話でのメイシーの苦悩そしてエリーとの出会いのエピソードを聞くと納得できないこともないと思うのです。それでもメイシーの言葉を聞き入れず否定するニニーの鬼気迫る様子には、「ダークドラゴンの始祖」と呼ばれる異形に一切の予断を許さない強い概念が見て取れます。

 

結果としてシンデレラはメイシーに対しても「星灰(スターアッシュ)」を撒き散らしたように見えるのでニニーとのえるの判断は誤りではなかったですが、実際のところこの星灰も攻撃として繰り出されているのか分かりません。

 

もちろんモロに当たれば大変なことになるでしょうけど、エリーがシンデレラの姿へと変化したことが黒化であるとも言いきれないので、メイシーへの敵意を生むきっかけになり得ないんですよ。それが童話竜の本来の姿であると言われればそれまでなのですが、メイシーと目があったシンデレラの一瞬の間がどうにも気になります。まぁそれでも童話竜とはそういう本来の悪をひた隠しにしているものなのだとしたら、僕はもう魔法にかかってしまっているんですね。このあたりは今後登場するであろう童話竜から読み取っていきたいです。

 

いやしかし、この「シンデレラ」という種類が1話でのニニーのエピローグと繋がってくるとは思わず膝を打ちましたね。

「おとぎ話なんかクソでしょ」という言葉はニニーのキャラクター性を明確にすると共に、『BURN THE WITCH』の作品の方向性すらも示していたんです。

 

魔法をかけられてお姫様になった女の子は途中でその魔法が解けてしまうも、物語を見ている人間の多くは憧れを抱きます。ニニーはそれをバカだと一蹴した上で、「バカしか魔法にかかんないならあたしは魔法をかける側がいい」と締めます。

 

この時ニニーの来ているシャツにタイトルが載っているのは、これが物語の主題に関わるということを指しています。

 

f:id:kuh_10:20200915001500j:image

『BURN THE WITCH』第1話「WITCHES BLOW A NEW PIPE」より

 

『BURN THE WITCH』というタイトルは直訳すると「魔女を燃やせ」となるわけですが、バカに魔法をかけるのは魔女であり、そして魔女を殺す方法は火あぶりです。誰かにかけられた魔法で強くなるのではなく、自身の力で強くなれというメッセージになっているわけですが、ここでこの世界線が『BLEACH』とクロスオーバーしている意義が光ってきます。

 

BLEACH』では朽木ルキアによって死神の力を受けた黒崎一護が、その力を朽木白哉に砕かれても一護自身の死神としての力を開花させていきます。両親から授かった力をひとつの出会いをきっかけに育み、大切な人々を護りながら戦って生きていく彼の生き方を強く踏襲しているんですよね。本当に1コマ1コマに込められた想いが眩しい作品です。

 

f:id:kuh_10:20200915001156j:image

『BURN THE WITCH』第4話「If a lion could speak, we couldn't understand」より

 

さて、少し話は遡りますが、「魔陣隊(インクス)」という名前の通り、ブルーノはスプレーを使うんですね。隊章がスプレーで描かれていることからも、これが彼らの戦闘方法だと分かります。ここでブルーノはマスクを着用するわけですが、骸骨を模したかのようなそれは、破面を彷彿とさせます。虚化して能力を高めていた『BLEACH』を思い起こさずにはいられませんでしたが、マスクによる能力上昇の様子は見られなかったので、単純にスプレーによる霧から守るためのもののようです。

 

そしてここからの戦闘において、公式にも「封印された魔陣を解放しながら強力な技を繰り出すことが特徴」と記載がありましたが、ブルーノは「解放番号」を唱えることで2つの魔陣を解放しました。

 

1つは解放番号0575「大喰らいの影(ハンガーシャドウ)」、そしてもう1つは解放番号2028「強欲の帷(グリーディカーテン)」。

 

「大喰らいの影」を解錠する際に使ったスプレー缶にはそのインクが赤色だと書かれています。わざわざ色に関する記載があるということは、魔陣の種類や力の度合によって色が違うのかもしれません。

 

現れた影の姿を見ると、ドラゴンというより猿に近い印象を受けます。その名からも攻撃に特化した存在であることが伺えますが、それをもってしてもダメージを与えるに至らないシンデレラの強さもきちんと示されています。

 

それを裏打ちするかのように「強欲の帷(グリーディカーテン)」をものともしないシンデレラ。魔陣の名前や質感、エフェクトからして対象を覆いその場に縛るようにも思えますが、ブルーノのセリフから段階的な追加効果がありそうです。見た目のおどろおどろしさや強欲というネーミングからも、抜け出そうと外気に触れたものを分裂させたり異次元に飛ばしたりといった、妙な殺傷性を感じさせる怖さがあるんですよね。

 

それと気になったのは番号の割り振りです。『BURN THE WITCH』(=尸魂界・西梢局)の世界で使われるマジックは、『BLEACH』(=尸魂界・東梢局)の鬼道のように、番号が割り振られています。

 

基本的に鬼道は番号が大きくなるほど高度なものですが、魔陣隊による魔陣の解放番号も数字と程度の差はあるのでしょうか。魔陣の封印順の番号である可能性もありますが、いずれにせよ2000以上の魔陣封印数であるのであれば、その幅はとてつもないものです。

 

解放した存在を半永久的に使役しているのか、もしくは何らかの契約を結び一時的に協力体制を敷いているのかも分かりませんし、そもそもドラゴンに準ずる存在でもないことすら考えられるので、バトルに発展すればかなりの情報戦が期待できるのかなと思います。

 

4話という物語の動き始める話数から、童話竜という存在そのもののインパクト、そしてそれらを討伐すべく展開されるキャラクター達の怒涛のぶつかり合いにとにかく手に汗握りますが、間髪入れずにバルゴの持つ笛が突如として剣になる展開。これが一体なんなのか、また剣を見たシンデレラはなぜ動きを止めたのか。バルゴの害竜指定が解除された理由から察するに、彼が童話竜を呼び起こすきっかけになっていることが何かしら関わっていそうです。

 

そして大方の予想通り、やはり主任はとてつもなく強かったです。『BLEACH』での例えが多いのもどうかと思いますが、浦原喜助にしても京楽春水にしても、おちゃらけたキャラクターは強いイメージばかりです。

 

これまでののえるとニニーの行動を主任がどこまで把握しコントロールしていたかは定かではありませんが、今後更なる活躍が見られそうです。英雄の息子と言われていたあたり物語に大きく関わる人物の血筋なのでしょうけど、主任の暗躍する姿を2人が認識した時、どのような反応を示すかも含めて楽しみで仕方ありません。

 

最後にのえるがバルゴと再会するシーン。シンデレラとの戦闘時にバルゴの身を案じて増援要請を拒絶していたことからも、のえるの中でのバルゴの存在は徐々に大きなものとなっていることが伺えます。連載発表当初の久保先生の「ラブコメを描く」発言がこのことを指しているのかは分かりませんが、Season2以降はバルゴもより展開に絡んでいくであろうことを考えると、双方の関係にも注目です。

 

さて、そんな4話でしたが、読み返す度に新たな発見や思いつく考察もあったりしてキリがなくなりそうなので一旦このへんで。

前にも書いた通り、ここ数年マンガ作品は単行本で読むことばかりで連載から追いかけるというのは学生時代以来だったので、この1ヶ月は月曜日が楽しみになる貴重な期間でした。まずは来月に控える劇場版を待ちつつ、またSeason2の連載も楽しみにしていきたいと思います。

 

kuh-10.hatenablog.com