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映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

『アオのハコ』で男子高校生の気持ちを取り戻したアラサーの末路

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(C)三浦糀/集英社

 

先日、ツイッターを眺めていたらマンガの1コマらしい画像が流れてきたんですよ。ショートカットで目のぱっちりした、それはそれは可愛らしい女の子がアップになった画像が。

 

なんか異様に可愛くて、やけに心に残るんですよね。何のマンガかなーとか創作絵なのかなーとか思いながらその日は過ぎ去ったんですけど、後日ふと今話題のマンガでもチェックしようと調べてみたら、その子が表紙を飾るマンガを見つけました。

 

『アオのハコ』。まだ2巻が出たばかりのようですがどうやら1巻が既に重版されており、初版の転売が問題になっているそう。

 

歳を重ねると本やマンガも増えていくばかりでいつしか電子書籍に移行した自分だけれど、初版で集めたい気持ちはよく分かるなあ。

初版でシリーズが手元に集まってくる美しさみたいなものや、それが完走できた満足感なんてものはそれはもうどうしようもない自己満足なのだけど、完結した時やその作品がアニメ化・実写化などした際に原作を初版で持っている自己陶酔は、オタクの悪い癖。

 

 

その女の子の隣には男の子がいて恐らく主人公なんだけど、手にはバドミントンのラケット。女の子はバスケットボールを抱えている。主人公とヒロイン、やってる競技は違うのね。競技は違えど上を目指すことは同じで嬉しさも悔しさも一緒に乗り越えて行こうね的なやつね。

 

ていうかこの子、バスケットボールやるんですね……。男子高校生はなァ…ショートカットでバスケ部の女の子が好きって相場は決まっているんだよォ…。

 

そんなこんなで出会ったマンガを読み始めた立派なアラサーなワタクシですが、この度めでたく男子高校生の気持ちを取り戻し、無事恋をしました。

 

ちょっと待ってほしい、これまで何百というマンガやアニメに触れ何千というヒロインを目にしてきたオタクに、ここにきて新たな感情を覚えさせるんじゃあないよ。

 

このマンガのあらすじとしては、バドミントン部に所属する猪股大喜が朝練で見かけるバスケットボール部の先輩・鹿野千夏に恋をして、どうにか距離を縮めたい大喜なんだけど相手は学校の人気者でなかなか上手くいかずも、とあるきっかけで2人の接点が増えていくというもの。

 

大喜のなかなか行動に移せないモヤモヤが特に男性読者にはよく分かるんじゃないでしょうか。好きな女の子を目で追ったりその子のことばかり考えてしまうんだけど、相手はすごく可愛くて周りにもたくさん人がいて、何かと理由をつけてはアプローチ出来ないことを正当化しようとするみたいな。

 

でも鹿野千夏はそんなことなど一切気にせず優しく声をかけてくれたり気遣ってくれる。

テンパる主人公にも快活に受け応えをするし、恥ずかしげもなくマフラーを巻いてくれたりするし、男なら好きな女の子に一度は言ってほしいセリフみたいなものを、鹿野千夏という女の子は惜しげもなくぶつけてくる。

 

こんなの好きにならん奴おらんやろ、っていうタイプのヒロイン。しかも主人公の先輩だから、お姉さん感があってすごく良い。

あの…僕来年30歳になるんですけど…あなたのこと千夏先輩って読んでも…いいですか?

 

このマンガの素敵なところのひとつは、学生の青さを思い出しながら読めるところだと思います。

 

相手の反応を深読みして嫌われてしまったのではないかと勝手に落ち込んだり、仲良さげに話すクラスの男子に嫉妬したり、先述の件もそうですけどそういう学生の頃に誰しもが通ってきた「多感な頃だからこその青っぽい恋」みたいなものを思い起こさせてくれる。

 

例えば千夏先輩がクラスメイトの男子と会話する姿を見て大喜が嫉妬するシーンがあるんですけど、自分のことのように思えてしまって嫉妬で狂えるんですよ。

 

安易なパンチラとかもいりません。不特定多数に千夏先輩のそういった部分を見られることが不快でたまらないから。もしもそんなことがあったらと考えるだけで軽く吐ける。

 

…そういった恋愛感情のような感覚が持てているという事実、恋愛作品として没入出来ている感覚が強く存在していてとても良いです。

 

そんな意味でも主人公・大喜の真っ直ぐさ熱血漢な部分は非常に好感が持てるし、不快にもならない点もポイントが高い。良くも悪くも好青年。

 

本作は今のところ綺麗どころばかりで(恐らくしんどい想いをするキャラクターはいるけど)ベタベタのラブコメを行く気はしている。ドロッとした展開も好きな自分ですが『アオのハコ』については心を痛める展開は嫌だと思えるほど、眩しさが際立つ作品なんですよ。

みんな幸せになってくれ。