10versLible

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映画、アニメ、漫画、音楽などの雑記。ファーストインプレッションを大切に。

4万5000人の男が東京ドームに集まった日

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UVERworldというバンドに出会って約14年。当初、ファンのほとんどが女性だった彼らが、男性だけで東京ドームを埋める。

当時中学生だった僕は『BLEACH』のアニメとゲームを通して彼らの音楽を知った。多様な音楽要素を取り込んだ独特のサウンドとボーカルTAKUYA∞の歌声がかっこいい、最初はそんな漠然とした想いの中で楽曲に触れていた。当時は学生だったこともあり学校や仲間内では様々なアーティストや楽曲が流行するも、僕はひとりUVERworldの音楽を聴きに戻る。歳を重ねてもそれは変わることがなく、彼らの放つメロディとメッセージは僕を離さなかった。

いつの間にかアラサーに差し掛かる令和元年12月20日。この日東京ドームには4万5000人の男が集まる。

 

 

 成功した途端に手のひらを返す者共に告ぐ 俺達がNo.1

「男祭り」

その名の通り、男性限定ライブ。UVERworldが定期的に行うこの男祭りは、2011年にメンバーの故郷滋賀のライブハウスB-FLATで230人の観客を集めるところから始まった。

翌年には約8倍のキャパシティであるZepp Nambaに挑むも、およそ500枚のチケットを余らせる結果となる。しかし、とんでもない熱量を持ってして成されるライブパフォーマンスが口コミを中心に広がり、2013年に日本武道館、2015年に横浜アリーナ、2017年にはさいたまスーパーアリーナといった大規模な男祭りを敢行。

 

今でこそ多くの男性ファンを獲得する彼らだが、デビュー当時に彼らを支えるファンのほとんどは女性だった。僕がライブに行くようになった頃には既に数千人規模のキャパシティを埋めるバンドになっていたが、ライブ会場は見渡す限り女性ファンばかり。男性ファンを見かけることがあれば嬉しくなってしまうようなレベルで男女比の偏りは明らかだったことをよく覚えている。

 

「自分達の作る音楽は年齢も性別も国籍も関係なく発信している。女性は流行に敏感だからUVERworldを見つけるのが早くて、それなのにネットではアイドルバンドだと言われることもあった。世間からそんな見られ方をされていることが女性ファンに申し訳なく思い、男性にも支持されるアーティストになっていきたいと思った」。そんなメンバーの想いと、表現者としての反骨精神から始まったのが男祭りである。

一方で男女間での性別による考え方や価値観が多様化する現代において、ライブに参加できる人を性別で分けるというのは時代にそぐわないともいえる。男祭りの規模が年々大きくなりその熱気が高まれば高まるほど、女性ファンは忍耐を強いられることになる。メンバー達もそのことを十分に感じており、だからこそ男祭りは時に「呪い」と表現される。前述の通り、彼らの音楽は年齢や性別など関係なく全ての人に届けるために作られる。平等であることはライブにおいてもいえることであり、本来参加の可否を性別で分けたライブはすべきではないということに繋がる。その矛盾を理解した上での男性限定ライブ決行は、野郎だけで東京ドームを埋められるだけの魅力があるバンドだと多くの人に証明するための強い決意の表れだ。

であるならば。それだけの決断をするのならば。その「呪い」からの解放を目撃しないわけにはいかない。そんな大きな期待感とファイナル故にその時を一瞬とて見逃せないという少々の緊張感の中でその日を迎える。

 

 

 好きなようにやれ そして俺に指図をするな

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開場時からドーム内のモニターでは既にカウントダウンが始まっている。18時30分。野太い大歓声の中、ステージ上に表れた彼らは「呪い」にトドメを刺しにかかる。

 

全体を通して、驚くほどいつも通りのパフォーマンスだった印象を受けている。東京ドームでも小さなライブハウスでのライブと同じようなテンションだったのだけれども。それでもここまで辿り着いた感謝をいつも以上に伝えてくれたことが何より印象だ。普段ライブが始まり数曲を歌い終えてからのMCは、盛り上がりを加速させるものだったり、次に歌う曲と繋がりを持たせるものだったりする。しかし、この日は違う。会場を見渡して感謝を述べ、頭を下げる。曲を歌い終わりマイクから離れたところで天を仰いで何度も「ありがとう」と口にする姿は、ライブ前半では初めての姿だった。

TAKUYA∞はしきりに「俺達と一緒に東京ドームに辿り着いてくれてありがとう。俺達を見つけて、共に生きることを選んで、戦うことを選んでくれてありがとう」と言う。とんでもない。こちらこそ人生に大きな影響を与えてくれてありがとう。これに至っては、バンドとファンという関係値以上の、そこに垣根はない感謝を伝え合う関係性もこのバンドの大きな魅力なのだろうと改めて認識させてくれる“対話”の瞬間だっただろう。

 

思えば、UVERworldの音楽を知ってからの最初の数年は歌詞について深く考えて聴いていることもなかった。中学生から高校生、大学生、社会人と年齢を重ねていくうちに様々なことを経験する中で、自分と重ね合わせる歌詞や鼓舞してくれる歌詞と出会って、1曲1曲により強い愛着を持っていった。大袈裟ではなく、自分のことを詩にして作ったのではないかと思ってしまうような楽曲だっていくつもある。「音楽に救われる」ってあるんだなと噛み締めさせられる。

思わず聞き入ってしまうメロディラインや電子音のオシャレさと詩がパズルのピースのようにガチッと当て込まれている、そんな彼らの音楽を創造する巧みさには本当に頭が下がるのだが、それと比例するかのように、時として彼らの歌詞には過剰なまでのまっすぐさや不器用さを感じる。彼らの音楽を通して、人生において大切なものを突き詰めた時に大事なことはそんな泥臭いものなのではないかと、四半世紀とちょっとの年月を生きた程度の自分ですら思わされる。それは自分の少ない経験則としてもそうであるし、何より彼ら自信が体現しているからこそ納得し、感じることだ。あれだけ輝いて見えるバンドですらとんでもない辛い想いもしていたのだろうが、それを全て乗り越えてここに来ているのだ。人生の教訓をアンセムとして言い放つ姿には強い憧れを感じるし、何より自分を奮い立たせる。そんな生き様を音と詩に乗せて等身大に表現し、導いてくれる姿こそがUVERworldの大きな魅力だと思っているし、女性のみならず多くの男性を魅了する理由の1つだろう。

 

そんなUVERworldと個々の日々の対話が少しずつ膨らんでいき、東京ドームという場所で同じ志を持った男Crew全員で肩を組んで合唱する『MONDO PIECE』は過去一の一体感だったのではないかと思う。あれこれと外野からのマイナスの声があったり、デビュー時にバンドメンバーの1人がレーベルから正規メンバーとして認められなかったり、不祥事からバンド活動を休止したりという過程を知るからこそ、自然と涙が流れた。歌詞を自分と重ね合わせることが多いからこそ、UVERworldの1ファンとしての心の底からの感謝だった。

 

 

 その最後まで忘れたくないよ 夢を願う時少し強くなれる僕らの日々

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©Sony Music Labels

 

中学生の時に少ないお小遣いを使って2ndシングル『CHANCE!』のCDを買った。現代のようなSNSを介して好きな物事を共有する時代でもなく、周りの友人とだけ好きな音楽をおすすめし合った。新曲がリリースされる度に唸らされるが、今でもそれは変わらず感服してしまうことは凄みがありすぎる。琴線に触れる程度のものではなく、がっちりと心を鷲掴みにされる感覚。先日リリースされたアルバムも、聴けば聴くほど底なし沼に足を入れているようで、すっかり魅了されている。そんな感覚を何年も覚えさせるだけの創造性が素晴らしい。

 

UVERworldと出会って5年目にして高校の友人らと初めてライブに行き、日々の生活の一部ともなっている音楽を目の前で奏でている姿に感動した。実はこの日ボーカルのTAKUYA∞が喉を潰しており、パフォーマンスとしては十分ではなかったというのが正直なところだった。それから10年近く経った今でも、彼はその時の悔しさを口にすることがある。ただ、当時の僕は100%のパフォーマンスを見られなかった悔しさなどは微塵もなく、彼らを初めて生で見て音の塊を感じられることがただただ嬉しかった。好きであるが故に盲目になっていると言われればそれまでかもしれない。しかし、それほどまでに大きな衝撃と感動を受けたことはどうしようもない事実である。

 

2010年に行われた初の東京ドーム公演では、野球観戦でしか訪れたことのないその場所を音楽で繋ぎ合わせるインパクトに圧倒された。今その時を振り返った時に彼らは「ライブに精一杯で皆に感謝の気持ちを伝えないままステージを降りてしまった。」と後悔の念を吐露する。こちらとしてはそんなことは微塵も気にしないままその日を終えた記憶であったが、メンバーのそんな想いを考えると、男女関係なく支持される唯一無二のアーティストという立ち位置に共に辿り着いた一体感を感じずにはいられない。

 

自分の半生にUVERworldという存在がある中で、ここまで導いてくれたことには感謝しかない。そしてこれからも僕は彼らの音楽に救われることでしょう。本当にありがとうございました。

 

新しい時代に足跡つけた、彼らがUVERworld

これからもよろしくお願いします。

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©Sony Music Labels